お願いフルーツ「その他」

映画『精神0』ネタばれあり

映画『精神0』ネタばれあり
職場の階下に映画館があるのに
ほとんど行ったことがなく、
これはもったいないと思い、
いまなら人も少ないであろうと、
映画を観に行ってきました。

淀川長治か浜村淳か、
忘れましたが、
試写会に映画を観に行って、
映画好きだなんて、
バカ言うんじゃないよ、
本当の映画好きは、
フラッと映画館に立ち寄って、
そのときにやってる映画を
なんの先入観も無しに
観るもんなんだよ、
みたいなことを言っていたので、
本当の映画好きではないけれど、
まずは意識から改革しようと、
日曜のお昼にやってる映画を
観ることにしました。

だから
作品については
全く知らず監督のことも知らず、
映画を観ました。

想田和弘さんという監督が、
精神科医の山本昌知さんと
患者さん、
そして山本さんの奥様に
密着したドキュメンタリーで、
何年か前にも
『精神』というタイトルで、
公開されていたそうです。

前回は精神科医の山本さんを
追いかけておったようですが、
今回は山本医師が、
82歳で突然、引退することになり、
再び山本医師に
カメラを向けたということです。

前回の作品の存在を
知らなかったので、
途中、明らかに数年前と思われる
場面が流され、
この作品を撮るために、
こんな長い間密着しとったのか!
と驚いたのですが、
後で理由を知り、
やや残念ではありました。
知らずに観た
自分が悪いわけですが。

山本医師はじめ、
皆さんがカメラを向ける
監督に対して、
誰も全く警戒がなく、
完全にそこに入り込んでいる、
その信頼感にも驚かされましたが、
それも2回めの撮影ならば納得。
ドキュメンタリーというのは、
ご挨拶して、さぁ撮りましょう!
でうまく撮れるわけがないのだ。

そう考えると、
合理的という言葉とは、
ほど遠い苦労を経て、
できあがるものなのでしょうね。
表現とはかくあるべきと思いました。

山本医師が、
突然やめると言ったことで、
患者の皆さんが、
戸惑いながら、
「これからどうしたらええか、
わかりやしません」と
言うのに対して、
後継の先生に引き継ぐから
大丈夫ですよ、と先生は言うのですが
私はこの場面を観て、
後を受け継ぐ先生も、
こいつは大変だろうなー、
確実に反乱が起こるだろうなー、
と心配してしまいました。
優れた人物の後を継ぐのは大変だ。

あとは終盤、
山本医師と奥様が、
夫婦揃ってお墓参りに行くのですが、
足取りが覚束ない奥様に
そっと寄り添い手を繋いで、
ゆっくりと歩を進めていく
2人の後ろ姿に泣けました。

いま、
新型コロナウイルスのおかげで、
あのような仲睦まじい場面さえ、
感染の可能性ゆえに、
否定されてしまうわけです。
オンラインでは解決できない、
ウイルスによる弊害が、
確かに存在するんですよね。

夫婦が手を取り合って、
互いに互いを支え合うことが、
当たり前にできる日々は
もう戻らないのでしょうか。
手を繋ぐ2人の後ろ姿を観て、
涙をこらえることが
できませんでした。

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