お願いフルーツ「その他」

最高の花婿 アンコール

最高の花婿 アンコール
映画好きは映画好き同士、
映画について語り合い、
読書好きは読書好き同士、
読書について語り合い、
音楽好きは音楽好き同士、
音楽について語り合います。

その際、
何があれば
いちばん会話が楽しくなるか?
といえば、
「それを知らない人」の存在です。

映画好きが映画の話をしている時、
映画について
よく知らない人がいるほうが、
知らない人をバカにしながら
話せるので
会話が楽しくなるのです。

読書にしろ、
音楽にしろ、そうでしょう。
私はあの底意地の悪さが、
心底下品だと思うので、
なるべく、ああはならないように
気をつけてはいますが、
それでも陥ってしまいがちです。

「私は君たちとは違うんだ」
という思想から、
人はなかなか、
抜け出せないものです。
人種差別や選民思想、
優生思想というものも、
少なからず、
そういったところから
発生しているように思います。

近頃は黒人差別の問題が、
全世界に広がりをみせていて、
差別問題が以前よりも
身近になったのも、
ごくごく近しいところに
昔から存在している
「知ってる私と知らないあなた」を
区別する思想について、
考えるきっかけになったように
思っております。

そんななかで、
まさにベストタイミング!
といっていい映画を観ました。
『最高の花婿 アンコール』
これは今観るべき映画です。

生粋のフランス人夫婦に
4人の娘がいて、
長女の夫はアルジェリア出身、
次女の夫はイスラエル出身、
三女の夫は中国出身、
四女の夫はコートジボワール出身。
みんな、パリで暮しています。

映画は2014年に公開された
『最高の花婿』の続編らしいので、
どうしてこの多国籍ファミリーが
パリで一緒に
暮らすことになったか?は
おそらく、そちらで
描かれているのでしょう。

4人の娘の父にあたる
クロードがとにかく、
フランス大好きであるがゆえに
言葉の端々に
フランス愛が滲みでており、
それゆえに、
アルジェリアやイスラエル、
中国、コートジボワールなど、
娘たちの夫の出身地を
ごくごく自然体で
バカにしてしまうんですよね。
国籍だけでなく、
人種や宗教に関する差別発言も、
飛び出ます。

妻のマリーが、
差別的発言に気をつけてね、
と言うのですが、
気をつけてるつもりなのに、
差別発言が止まりません。

こういう、
無自覚の差別意識のことを、
なんとかと言うのですが、
忘れてしまいました。
誇り高きパリジャンは、
おそらく、それの塊なのでしょう。

と、
パリジャンのことを
決めつけてしまう、この表現も、
無自覚の差別意識でありましょう。
いま、自覚してるから、
無自覚じゃないんですけど。

作品は多国籍ハラスメントを
滑稽なものとして笑う
コメディ映画ですが、
手放しで笑えないのは、
自分にもそういうところが、
あるんじゃないか。と
省みてしまうからでしょうか。

映画の結末は、
「やっぱりフランスって最高よな!」
っていうところに落ち着くので、
それはそれでどうなのかしら?
と思うのですが、
結末に至るまでに、
根っこのところを
揺さぶられる感じがすごくあります。

おもいっきり、
ゆっさゆっさと揺さぶられて、
自分という木の枝葉や、
あるいは幹の部分から、
差別の実が落ちてこないか、
試されているような作品です。

いま観るべき映画を
いま観たという感じ。
いい映画を観ました。
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