お願いフルーツ「その他」

1人目の客になれた話

1人目の客になれた話
涌井慎です。
趣味はオープンしたお店の
1人目の客になることです。

今朝、
烏丸四条の職場へ
自転車で向かう途中、
四条大宮西入ルにて
「7月17日オープン」という
貼り紙の貼られたお店を
見つけました。

この道は普段は通らない道です。
何かお導きのようなものを感じ、
今日は急遽、
ここに行くことに決めました。

職場の私の趣味に
理解を示してくれている方に
この話をすると、
オープン時間が17時であることを
調べてくださったので、
急ぎで今日までに必ず、
仕上げねばならない仕事を仕上げ、
16時過ぎに職場を出ました。

困るのが、
自転車の置き場所です。
このお店は飲み屋なので、
駐輪場はありません。
私は次男を預けている
保育園に
置かせてもらうことにしました。

保育園はこのお店より、
家寄りですが、
いったん自転車を停めに行くのには
私はこのお店の前を
通ることはしませんでした。
そこで客が待っている場面を
見たくなかったのです。

おかしいと思うでしょう。
仮にそこで客か待っているのを
見てしまったほうが、
「やっぱり店に行くのをやめる」
という方向転換を
早くできるのにも関わらず、
現実を見ないほうを選んだんです。

合理的ではないと
わかっていますが、
夢は少しでも長く、
見ていたいものではありませんか!

自転車を停めて、
急ぎ足で店へと向かいます。
お店は四条通り沿いにあります。
祇園梛神社のある、
あの縦の通りを曲がり、
大宮通りのほうへ歩いていくと
2分もかからず到着です。

店の前で
立ち止まるおっさんが見えます。
「今日オープンやん。
どんな店なんやろ?」と
チェックしているようです。

「チェックだけで終われ!
通り過ぎろ!通り過ぎろ!」と
念じておりますと、
彼はそのまま通り過ぎました。
願えば叶うものです。
サマージャンボ、買おうかしら。

到着。
私の前には誰もいない。
私の後にも誰もいない。
しばらくすると、
私の後におっさんが現れました。

「店の人でっか?」

私の佇まいを店の人と、
思ってしまうおっさん、
人生の先輩でありますが、
言わせてもらおう。
人を見る目がなさすぎやで。

「違います。
オープンを待ってるんです。」

「オープンを待ってるんです」の
部分を強調しました。
犬のマーキングのようなものです。
1人目の客は私だよ、
というアピールなのです。

すると、おっさんは
「今日オープンて書いてあるけど、
時間が書いてないやろ?
こういう場合、常識的には
何時オープンなんでっか?」

私が店員ではないことを知り、
用意していた質問に
「常識的には」を
加えたのでしょう。
私はその「常識的には」の部分に
好感を持ちました。

「17時らしいですよ」と言うと、
去っていきました。

今日明日あさっては
生ビールとハイボールが
100円ということもあり、
どうやらご近所の酔っ払いたちは
虎視眈々とオープンを
狙っているらしく、
さきほどから
狙撃手のような目つきの
おっさんたちが店内を一瞥しては
去っていきます。

君たちはただ、
安くで飲みたいだけだろう。
私は違う。
私は1人目の客になりたいんだ。
君たちに
負けるわけにはいかないんだ!

そのとき私はスラムダンクの
赤木キャプテンのように
青春を感じていました。

7月17日、17時、
四条大宮西入ルにオープンした
「浜焼きボーイと串カツガール」
1人目の客は私です。

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