お願いフルーツ「その他」

アンナ・カリーナ君はおぼえているかい

アンナ・カリーナ君はおぼえているかい
学生時代は
よく映画を観ました。
当時お付き合いしていた方の影響で
フランスの小難しい映画を
よく観ました。

ゴダールのほか、
なんだったか、
もう名前も忘れてしまいました。
フランス映画だけでは
なかったかもしれませんが、
なんにせよ、
アンニュイな雰囲気の漂う
画質の粗い登場人物が
タバコを吸うか
お互いのカラダを吸い合うか
どっちかをしている映画です。
なんとなく、
いけないことをしている映画です。

そのいけないことをしている映画を
彼女と一緒に、
京町家で女友達三人で
共同生活をしている彼女の部屋で
観ることしか、
していなかった気がします。

なんてことを書くと、
すごく映画マニアのようですが、
そんなことはなく、
気が向いたときに、
一緒に観ていただけです。
あの頃の私はといえば、
「小難しいフランス映画を
美しい恋人と一緒に観る俺」のことが
とてつもなく好きでした。

そういう優越感を
刺激するのに
小難しいフランス映画は
格好のアイテムでした。

京都シネマで、
昨年12月に亡くなった
アンナ・カリーナの追悼作品が
上映されると聞いて、
当時のことを思い出しました。

シャネルが名付け、
ゴダールが崇め、
ゲンズブールが囁いた。
革命のミューズとして、
ヌーヴェル・ヴァーグの
アイコンになった女優、
その伝説的な人生と映画たち。

アンナ・カリーナのことは
あまり覚えていませんでしたが、
学生の頃、京町家二階の彼女の部屋で
よく観ていた映画に、
きっと出演していたはずです。

思い返してみると、
彼女は雰囲気が
アンナ・カリーナに
似ていたような気もします。
気性の激しいところもまた、
外国映画のヒロインぽかった。

最後列の席に座り、
上映を待っていると、
上映直前に入場し、
軽やかな足取りで前のほうの席に
座った女性が、
当時の彼女に似ているような
気がしましたが、
それは『アンナ・カリーナ』を観る、
という心算が、
似てるように見させたのでしょう。

小難しいフランス映画の扉を
少しだけ開いたような
ドキュメンタリー作品でした。
もともとそんなものを
「よい」と感じる素養は
私にさほど在るわけではないので、
正直退屈な1時間になりましたが、
その退屈な時間の過ごし方が、
嫌いではないと思いました。

自分のなかに無いものに
自分を染まらせていく時間は、
自分を否定しているようで
居心地が悪いから、
退屈だなんだと言い訳しては、
守りに入ろうとしてしまう、
そんな自分の情けなさを
確認するのにちょうどよかったです。

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