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美しく豊かな海

美しく豊かな海
昨日か一昨日かの
毎日新聞の記事によると、
去年12月、
兵庫県議会が
下水処理場の排水の
窒素濃度について、
県独自に厳しくしていた規制を
撤廃する条例改正案を可決しました。
これまで生物化学的酸素要求量を、
海と川で1日平均1リットル中
20ミリグラムまでと
定めていましたが、
改正により、国の基準と同じ
1リットル中120mgにまで
緩和しました。
 
これに先立ち兵庫県では去年の9月、
海水中の窒素とリンを
減らしすぎないように、
県独自の下限値の基準を
新たに設けることを決めました。

窒素とリンを増やしすぎないように「上限」を決めるのではなく、
「下限」を決めたわけです。
これは異例のことだといいますが、
 背景には県の特産品である
養殖ノリの色落ち被害や、
漁獲高の減少の深刻化がありました。
主な原因は「栄養塩」の不足です。
栄養塩は窒素、リン、ケイ素など
海中に溶け込んだ生物の
栄養となる物質の総称で、
プランクトンやノリなどの
成長には欠かせないものです。
海の豊かさを示す一般的な指標で、
栄養塩は海に流れ込む河川や
海底の泥などから供給されます。
 
高度経済成長期の瀬戸内海は
沿岸の工場などから窒素やリンを
多量に含んだ排水が
大量に流入したため、
汚染が深刻化して
「死の海」とも呼ばれました。
窒素濃度の上昇による
富栄養価でプランクトンが
異常増殖して起こる
赤潮の発生も悩みの種になりました。
のちに瀬戸内海環境保全特別措置法が
制定されると、
排水の総量規制が実施され、
赤潮の発生は減少。
スキューバダイビングに適した
透明度となるレベルまで
回復しました。
 
ところが
これが難しいところで、
きれいな海が必ずしも
漁業に適しているわけではなく、
栄養塩が減りすぎたことで、
「海が痩せた状態」に
なってしまいました。
そこで、2015年、
瀬戸内海環境保全特別措置法が
改正され、水質規制で
キレイな海を追求するだけでなく、
「豊かで美しい海」を
目指す政策への
方針転換を決めました。

キレイなだけでは豊かにならず、
豊かさを求めすぎれば、
赤潮の発生などの原因となる。
この記事を読んで、
つくづく人間社会と似ているな、
と思ったのです。

便利になれば環境に負荷がかかるし、
かといって環境に負荷を
全くかけない暮らしは不便だし、
という、昨今の
プラスチックごみ問題に
通じるものもありますし、
 「美しく豊かに」という
二刀流を求めていかねばならないのは
不要不急の外出を避けて
ウイルスの収束を
待たねばならないかと思えば、
外出を促して経済を
回さなければならない、
ウイルスとの共存にも
通じる問題である気もします。

瀬戸内海が目指す先に
ウィズコロナ時代のヒントが
隠されているようです。
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