京都フルーツ

1人目の客になれた話

1人目の客になれた話
涌井慎です。
趣味はオープンしたお店の
1人目の客になることです。

惜しまれつつ、
閉店するお店もあれば、
開くお店もあります。
お店の最後の日に
名残を惜しみに行くよりも、
お店の最初の日に
お祝いをしに行くほうが、
ハッピーではありませんか。

こんな私でも、
年に一回、京都の老舗ライブハウス
磔磔にて「涌井大宴会」という
イベントを開催していまして、
その日の夜は終演後に
磔磔で打ち上げをするのですが、
必死になって作り上げたイベントのあとは
無尽蔵に飲みたくなるものです。

ライブハウス界隈には
そういう飲兵衛が
たくさんいるのではないかしら。

そんな時に、
磔磔で飲んだあと、
誰も何も言わなければ
二軒めはここやろ!というお店が
何ヶ月か前に閉店しました。

閉店する店のことは
追いかけないので、
いつ、なぜ閉まったのかとか、
覚えていないのですが、
このお店に対して、
思い入れのある方は、
たくさんおられたようで、
どうやら、そんな人のうちのお一人が、
店を受け継ぎ、
再オープンするらしいと聞いたのは
何ヶ月前だったでしょうか。
閉店した後であることは
間違いありません。

昨日、愛すべき友人が、
そのお店が今日の17時にオープンすると
教えてくれました。
友人は四条河原町を2本下り、
ココイチを左折、
どん突きを右折したところにある
キャロルキングというバーを営んでいます。
バンドマンで私なんか以上に
磔磔後にこの店に
お世話になっているはずです。

なにしろ、
思い入れを持つ人は
多いはずなので、
少し早めに着いておいたほうが
よかろうと判断して、
16時過ぎに到着したところ、
誰も並んでいませんでした。

コロナ禍における
感染対策でしょうか、
入口のドアは開いています。
昨日まで何度か、
プレオープン的なことを
されているらしく、
「本日オープン!」という、
昂揚感はありません。

もう、当たり前のように
ずっとここに在った感じ。
どうやら店内の
以前とほとんど変わっていないようです。

ずいぶん早くに待っているので、
お店の方に怪しまれてしまいました。
いいえ、怪しんだつもりは
なかったと思いますが、
なにしろ不審ではあったでしょう。

「前からよく来てたんで、
楽しみにしてたんです!
待たせてもらってもいいですか?」
と精一杯、ハキハキ伝えましたが、
マスク越しとはいえ、
あまりハキハキするのも、
いまは迷惑だったかしら。

しかも、
怪しまれているという
なんとなくの負い目もあり、
少し大袈裟なことを言ってしまった。
私なんかよりも、
思い入れの強い人はたくさんいるでしょう。

きっと、
そういう特別な人たちに対して
最初におもてなしをしたい、
という思いから、
本オープンに先駆けた
プレオープンというイベントが
開かれるんでしょうね。

オープン10分前、
店主(と思われる男性)が
「1人目のお客さんやし、
記念に写真撮ってもいいですか?」と
言っていただき、
「え、いいんですか?」と
RADWIMPSのようなことを答えたら、
少し戸惑っておられました。

オープン前に入店させてもらいまして、
しばらく後に雑誌かなんかの方が
開店初日の様子を取材に来られました。
さすがですな。

そこそこの思い入れのくせに
1人目の客になってしまい、
申し訳ないのですが、
下京区市之町 招徳ビル1Fに
本日オープンした
「地球屋」の1人目の客は私です。


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