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読書の記録 柚木麻子『BUTTER』

読書の記録 柚木麻子『BUTTER』
柚木麻子『BUTTER』

何年か前に、
数人の男性の財産を奪ったうえで
殺害した女性が逮捕されまして、
その事件のことは、
うっすら覚えているのですが、
どうして覚えているのかというと、
その逮捕された女性の容姿が、
当時非常に話題になったんですよね。

なんであの女に(が)・・・
っていうのが世間の一般的な反応でした。

その女性の連続殺人事件から
着想を得た長編小説です。
文庫化されて書店に並びはじめた頃から
表紙に惹かれるものがあり、
いつか読みたいと思っていたのですが、
ようやく読むことができました。

雑誌の編集者の女性が、
この容疑者のルポを書くべく、
取材を申し込むために、
拘置所に何度も面会に訪れるのですが、
面会は断られてばかり。

ある日、料理上手の友人に、
「料理の話をしたら、
人は心を開きやすい」と助言を受け、
面会申し込みの手紙に、
料理のことを書いてみたら、
面会してくれることになりました。

面会で話をするたびに、
この容疑者(梶井といいます)は、
編集者の女性(里佳といいます)に
「お題」を出します。

例えば、
「熱々のご飯の上にエシレバターを乗せて、
そこに醤油を一滴垂らして
食べた感想を述べよ」とか。

梶井は逮捕される直前まで、
ブルジョワマダムたちが集う
お料理教室に通っていて、
自身、ブログに料理のことを綴る
ブロガーでもあったため、
取材する側にも、
料理に関する知識を求めてくるわけです。

だんだん要求がエスカレートして、
しまいには、
「なんとかというラーメン屋
(名前忘れた)の
塩バターラーメンは抜群に美味いが、
セックスしたあとに食べたら、
その美味さは格別だから、
セックスしてから食べてこい」などと
いかれた要求までするわけです。

どこまでが実話なのか、
知りませんが、
読んでいくうちに、
そんなことはどうでもよくなり、
ぐいぐい物語に惹きこまれてゆきます。

ネットで調べたところによると、
モデルになった容疑者から、
「私はあんなんじゃない」と
クレームがあったらしいですが、
もし本当に「あんなん」なのだとしたら、
惹かれた男たちの気持ちも、
わからんではないような、
いや、やっぱり絶対わからないような。

なんにせよ、
一つ確実にいえるのは、
読んだらめっちゃエシレのバターが
食べたくなるということです。
次の給料で買ってみたい。
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