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やりがいとは

やりがいとは
今年のノーベル賞は
日本人の受賞がなかった。
日本は1990年代後半から、国の施策で
「科学技術立国」を目指しているが、
基礎的な力量を示す注目論文の数は
中国やアメリカでは増えたいっぽう、
日本は取り残されているのが現状のようだ。

2019年、吉野彰さんが化学賞、
2018年、本庶佑さんが生理学・医学賞、
2017年は受賞がなかったが、
2016年には大隈良典さんが
生理学・医学賞を受賞している。
近年、日本人科学者の受賞が
相次いでいる反面、
受賞された科学者の皆さんは揃って、
昨今の研究環境の悪化から
「10年後、20年後に日本から
受賞者は出ない」とも語っている。

こんな話がある。
1980年代、日本とアメリカでは
それぞれの研究グループが、
地下深くの巨大タンクに水をため、
ニュートリノが通過する瞬間を
光センサーで捉えようと、
観測競争を繰り広げた。
ニュートリノは宇宙から
飛んでくるけど目には見えず、
地球も突き抜けてしまうという
素粒子のこと。
日本チームが当時、
国に掛け合って獲得した予算は、
およそ4億6千万円。
いっぽうのアメリカは
その10倍規模だったという。
それでも日本は検出に成功し、
2002年、小柴昌俊さんが
ノーベル物理学賞を受賞した。

こうしたエピソードはひと昔前なら、
「やればできる!」の
好例となったのかもしれないが、
逆にこの成功が、
「金なんぞ無くても、
努力しだいで成果は得られる」という
「悪例」になってしまったのではないか、
という気もする。
類稀な成功例が若い科学者の
重しになったりしていなければよいのだが。
というのは考えすぎだろうか。

かつて稲盛和夫さんが、
「やりがいはあるけど給料の少ない仕事」と
「つまらないけど給料はよい仕事」なら、
絶対に前者を選ぶべきで、
「やりがい」というのは、
給料に勝るものであるというようなことを、
言っていたそうだが、
こうした言葉を逆手による悪人も
星の数ほど存在する。
「やりがい搾取」などという言葉が、
生まれてしまう所以だ。

19世紀に細菌学を切り開いたパスツールは
「チャンスは準備が
整っているところにやってくる」
と言ったそうだ。
重みを感じる。
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