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読書の記録 東野圭吾『クスノキの番人』

読書の記録 東野圭吾『クスノキの番人』
東野圭吾といえば、
「読書週間」を前に読売新聞社が実施した
全国世論調査で、
「好きな作家」を尋ねたところ、
6年連続トップになるという、
いわば国民的作家であるが、
にもかかわらず、
というか、「だから」かな。
これまで一作も
読んだことがなかったのだが、
そんなことではいかん!と、
ちょうど最近、
「さすがに読んでおかないと」といって
『鬼滅の刃』を読み始めた人たちと
同じような心境で読んでみたのが、
東野圭吾の新作『クスノキの番人』。

物語の主人公・玲斗は、
大きなクスノキのそびえたつ神社で
働いている。
何をしているのか、というと、
タイトルの通りで、
「クスノキの番人」をしているのだ。

このクスノキはお昼間は
なんとなく雰囲気のある
大きな木に過ぎないのだが、
夜になると「特別な力」を持つらしく、
その「特別な力」を求め、
参拝者は 夜になると、
そのクスノキに祈りにくる。
この「祈り」のことを「祈願」や
「お祈り」ではなく「祈念」という。

祈念の内容は誰にも明かしてはならず、
祈念すれば、必ず願いが叶うのかといえば
そんなことはなく、
なかには 誰かの死を願うなんていう
物騒な祈念をする人もいる。
玲斗は ある出来事がきっかけとなり、
このクスノキの番人を命じられるのだが、
そんなクスノキの力に対して半信半疑だ。

ところが、
クスノキの番人をしているうちに、
玲斗は 祈念には一定の法則があり、
祈念にやってくる人にも
共通点があることに気づく。

クスノキの謎が解明していくごとに、
祈念する人たちの謎も
解き明かされていくことになる。

人気なだけあり、
さすがに面白かった。
いわゆる「伏線回収」っていうのか、
それが絶妙に上手い。
あらゆる面でスマートで、賢かった。
世間に乗っかってみることで、
新しい感覚に出合えた。
自分の感覚を信じずに生きていると、
こういう恩恵があるのだ。
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