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一人目の客になった店が閉まった話

一人目の客になった店が閉まった話
去年の今日11月15日に
私が一人目の客になったお店が、
一周年を待たずに閉店しておりました。
悲しいので一人目の客になった時の文章を
載せておきます。

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涌井慎です。
趣味はオープンしたお店の
1人目の客になることです。

近頃は、この私の趣味のことを
知ってくださる方が増え、
私のことを知らない人に
私のことを紹介する際に、
「ラジオの人」ではなく、
「オープンしたお店の1人目の
客になることを趣味にしている人」
と言われるようにさえなりました。

ありがたいことに、
オープン情報を
お知らせしてくださる方も増え、
そうしたお店については、
行ける限りは行くことにしています。

しかし、
人気の高そうなお店は
どのくらい前に行くべきか悩みます。
特に「ラーメン屋」は
どれだけ美味しくて
人気なんか知らんけど、
「所詮ラーメンやで」という
思いもあり、
「かなり早めに行っておかないと
無理だと思いますよ」と言われても、
「そんなもんかね?」と
半信半疑だったのですが、
信じずに間に合わないよりは、
疑わずに間に合うほうがよかろうと、
いうことで、
四条木屋町下ルに11時30分に
オープンするお店に向かい、
10時前に四条烏丸を出発しました。

阪急電車で河原町へ。
金曜の10時を過ぎているというのに
ものすごい人、人、人。
普段、あまりこちらには来ないので
メインストリートの底力を
見た気がしました。

しかし、
今から行くラーメン屋は
かなり人気だと聞いていたので、
よもや、この人々の大半は、
私の目指す店へ、
向かおうとしているのではないか、
と焦ってきました。

そういえば、
通り過ぎゆく人々は、
みんな心なしか、
俯きがちに歩いている。
あの陰鬱とした角度は、
まさに一人でラーメンを啜るときの
それではないか。

この人たちの抱える憂いに、
光を当てるのが、
それこそが、
ラーメン屋なのではないか。
向かうお店の名前も、
「人の憂いに光を」となっている。

しかし、
私の不安は杞憂に終わりました。
地上に出てみると、爽やかな青空。
俯きがちな人々は、
私の向かう四条木屋町下ルには
用がないらしく、
散り散りになっていきました。

それでも、
なにせ人気店と聞いている。
もうすでに並んでいるのではないか、
と気になり、急いでみる。
おなじみの餃子店が見える。
確かあのお店の近くのはず。

見えた!
開店を祝う花たちが見えた!
あのお店にちがいない。
自然と早足になる。

風が冷たい。
汗はかかない。
花が大きくなっていく。
シャッターは半分閉まっている。

店の前には黒い影が。
ぬおお、やはり・・・

いや、店員さんでした。
なんだ、行けたじゃないか。
阪急に乗ってる間、
正直、行けないんじゃないかと思い、
ダメだったとき用に
どうやって書くかを
シミュレーションしていたのに。

趣味レーションやね。

思いのほか、
たやすく1人目になれてしまった、と
思っておりますと、
ものの2分もしないうちに、
女性が1人、私の後ろに付きました。

危ないところや。
1本乗り遅れていたら、
私がこの人の後ろに付くことに
なったでしょう。

大袈裟なことをいえば、
人生というものは、その程度の差が、
勝敗を決するようなことがあり、
勝利を手繰り寄せるのは、
ほんの些細な、
人を信じる、疑わない、という、
気持ちだったりするんですね。

世の中捨てたもんじゃない。
優しい光に包まれた気がした。

11月15日 午前11時30分。
四条木屋町下ルにオープンした
ラーメン店「優光」の
1人目の客は私です。

レシートもらい忘れた。。

ちなみに、
お店のインスタグラムを
フォローしたら
今日は先着100人、
ラーメン無料です。
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※内の文章は
去年11月15日に書いたものです。
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