お願いフルーツ「その他」

読書の記録『そして誰もいなくなった』

読書の記録『そして誰もいなくなった』
今年はアガサ・クリスティの
デビュー100周年で生誕130年の年。

というわけで、
いままで読んだことなくて、
アガサ・クリスティが男か女かさえ、
知らなかったくらいなんですが、
こういうきっかけを大事にすれば、
触れたことのないものに触れられるもので。
固まった感覚を揺らすために、
自分にはなんの関係もない
記念日などに執着してみるのです。

去年読んだ
『カササギ殺人事件』が、
べらぼうに面白くて、
アガサ・クリスティにオマージュを
込めた作品であると聞いていたので、
いつか読みたいとは思っていたのですが、
自分の性格上、
この「いつか読みたい」は、
「いつまでも読まない」なんだろうな、と
なんとなく感じていましたので、
周年に乗っかることで、
そのハードルを越えられたことが、
まず自分にとっては
喜ばしいことでありました。

読んでみて、
『カササギ殺人事件』どころか、
世界中のあらゆるミステリー小説が、
少なからずアガサ・クリスティの
影響下にあるのではないかという、
いまさらながらに
大きな感動を覚えました。

タイトルで一目瞭然なように、
最後、そして誰もいなくなるわけですが、
何がとてつもないかといえば、
こうしてタイトルで結末が、
9割方予測できるにもかかわらず、
ミステリーとして最後まで読ませる技です。

それに長くもなく短くもなく、
あっけなさも、まどろっこしさもなく、
あっさりしているわけでもなければ、
えげつない描写があるわけでもない。
さらっと読めるようでいて、
昨今の売れ筋作家のやっつけ感のある
消費される小説のような感じはない。

この「ちょうどいい塩梅」は
何なんでしょうか。
ひとりよがりもなく、
物足りなさなんてもちろんなくて、
読んだあとに余韻が残る。

デビューから100年経ったいまなお、
愛され続けている理由の一端を
垣間見ましたね。
あと、詳しいことはわかりませんが、
翻訳もめちゃくちゃいい仕事を
しているのだと思います。

母語以外の言語で書かれた小説については、
原作者と同等、
あるいはそれ以上に、
翻訳者のことが賞賛されるべきでしょうね。

結末がわかっていても、
何度も読みたくなるミステリー小説って、
ほんまに化け物みたいやな!
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