お願いフルーツ「その他」

アデルの砂肝

アデルの砂肝
番組宛に先日、
「道路交通情報などの冒頭で、
企業の名前の前に入る英語は
ゴッチューバイや
グロッチューバイと聞こえるのですが、
何と言っているんですか」という
問い合わせのメッセージが届きました。

提供を意味する
brought to you by が、
ゴッチューバイや、
グロッチューバイに聴こえて、
炎すべて焼き尽くすみたい。ゲッチュー。

笑い話のようですが、
私もbrought to you byを
知らなかった頃は、
brought to you byとは
聞こえていなかったと思う。

それなのに、
一度brought to you byだと
わかってしまったら、
もうbrought to you byにしか
聞こえません。

こういうことは他にもよくあり、
ビルウィザースのLovely Dayのサビは
ずっと「ダビデ」と歌っているんだと
思っていたから、
あの歌が流れるたびに頭の中に
ダビデ像が出てきたものですが、
「ダビデ」ではなく、
「Lovely Day」なのだと知ってからは
ダビデ像が消え失せてしまった。

私の耳が悪いだけなのかもしれませんが、
こういうのは探せばいくらでも出てくる。
サラバレリスのLove Songのサビは
ずっと「中野ライジングァラブソン」と
聞こえていたため、
いつもサビになると、
サンプラザ中野くんが現れたし、
アデルのChasing Pavementsのサビを
聞くたびに頭の中は
砂肝だらけになった。

それが今はちゃんと聞こえるのは、
なぜなのかといえば、
文字という、
視覚の知識が入っているからだと思う。

最近、長男とNHKラジオの基礎英語1を
一緒に聞いているのですが、
長男がテキストを見ないで、
声だけ聞いて発音を真似るときがあります。
これがいつも面白くて、
例えば、
practiceは「カプティス」
littleは「リロー」と発音するのです。

これって、
文字で知識を入れてしまってからでは、
なかなか発音できない。
littleなんて、
確かに「リロー」って言ってるけど、
littleが日本語読みで「リトル」だという
知識もあるし、tは「タ音」だということを
知ってしまってる分、
「ロー」と発音することに
躊躇いがあるのです。
何を気取って英語できる風に
発音してやがるんだっていう、
恥じらいなようなものもある。

そうなってくると、
なんとなく文字で得てしまった知識は
余計なもののような気がしてしまう。

聞いたまま、聞こえたままに
カプティス、リローと言える長男のことも
ゴッチューバイ、グロッチューバイと
聞こえるリスナーさんのことも、
かつてダビデ像やサンプラザ中野くん、
砂肝なんかを思い出していた
あの頃の自分のことも、ちょっと羨ましい。

何かを手に入れたら、
知らない間に
何かを手放してしまっているのだ。
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