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好きなものを語る言葉

好きなものを語る言葉
何月何日か忘れたが、
(チェックしておけという話だが)
朝日新聞に解剖学者の
郡司芽久さんのコラムが掲載されていた。
郡司さんのコラムは毎週か隔週で、
何曜日だかに掲載されるのだが、
これが実に面白く、
先日のものは特に面白かった。

なんでも郡司芽久さんは以前、
取材を受けていたとき、
インタビュアーが、
「キリンは目が可愛い」と
つぶやいたところ、その一言に対して、
「目が大きくてまつ毛が長いですからね。
背が高いので、目が少し
下を向いていて伏し目がちなところや、
いつも涙目なところも良いです」
と返したところ、
自分は好きなものについて、
こんな風に語れるのかと驚いたそうだ。

郡司さんはそこで、
「何かを深く知ることは、
愛情を語る言葉を増やすことなのだ」
と知ったという。
(※郡司さんはキリン研究をされています)

郡司さんいわく、
キリンが常に涙目なのは
瞬きの少なさが原因。
人間は1分に20回、
馬や豚は30回ほどであるのに対し、
キリンは数分に一度と極端に少ないそうだ。
瞬きには目に涙を行き渡らせ、
乾燥を防ぐ役割があるが、
キリンは回数の少なさを
涙の量で補っているという。

ちなみに人間は「乾燥防止のみ」
を目的とするなら、
瞬きは1分に2度で十分なんだそうだ。

では 残りの瞬きは
何のためになされているのか?
仮説の一つが
「コミュニケーションのため」。
単独行動のサルより、
集団行動のサルのほうが
瞬きを多いという報告もあるそうだ。

そうしたご自身の専門分野に
関するお話を踏まえて、
郡司さんは、
ネット上の誹謗中傷について話している。

「瞬きすらコミュニケーションに使う
私たちにとって、
相手の目が見えない状況でのやり取りは、
想像以上に困難なのかもしれない。
嫌いなものではなく、
好きなものを語る言葉を多くもつ人が
一人でも増えることを心から望む」

ものすごく良いコラムだったので、
ほぼそのまま拝借してしまった。
確かに好きなものを語る時の言葉は、
ボキャブラリーも豊富になるし、
より正確に魅力を伝えたいがために、
一生懸命、言葉を選びながら、
慎重に伝えようとするから、
品がよくなる気もする。

逆に嫌いなものを語る時の言葉は、
正確に伝える必要はなく、
自分が憂さ晴らしできればそれでよいから、
ボキャブラリーは貧相になるし。
テキトーに言葉を選べばよいから、
あほくそびっち。
下品であっても何も問題はない。

嫌いなものを語る時間より、
好きなものを語る時間が長いほうが、
人生が豊かになるのは間違いない。

うん、そうしよう。
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