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先日、図書館で
本を読んでいたところ、
黒いハットを被った
ご婦人が入ってきました。

たぶん70歳くらい。
ただ、あれくらいの年になると、
正直いくつか、見た目では
わかりません。
まぁ、たぶん70歳くらい。

おそらく自覚がないのでしょうけど、
ずっと本を探しながら、
ひとりごとを呟いておられる。
静かな図書館では、
小さな声でも気になるものだ。

う〜ん。
と思いながらも読者していたのですが
やっぱり気になるんですよね。

そしたらご婦人、
私の席の割とすぐ近くに
お座りになられたのです。
ひとりごとは続いています。
チラッと見てみると、
どでかい上村松園の資料を
見ておられる。

ひとりごとは続いている。

ちょっと辛いと思い、
ご婦人のほうを、
しっかりと向いてみた。
ご婦人と目が合った。

ご婦人が、
「ごめん！」という表情で
ウインクをしてきたから、
全部許してあげようと思った。

それから、
ご婦人のひとりごとは無くなった。
こっちが「ごめん！」と言いたくて
もう一度、ご婦人のほうを
しっかり向いてみたけれど、
ご婦人は上村松園に夢中でした。