京都フルーツ

喫茶店のお話シリーズ 『翡翠』

喫茶店のお話シリーズ 『翡翠』
用事で大徳寺まで来てみたら、
諸事情で 滞在が長くなり、
気付けば日も暮れていました。

大学を卒業したての頃は
この界隈でよく遊んだものだ。

設備はよくないし、
店員の愛想は悪いけど、
とにかく安い音楽スタジオ。
屋台のような佇まいで
唐揚げの美味いラーメン屋。
ちょっと妖しげな
麻の香りのする珈琲屋。
久しぶりに歩いてみたら、
全部 閉店していた。
15年経てばそんなものか。

それでも変わらず、
光輝く純喫茶「翡翠」。
アルバイトらしき男性は若かった。
15年前、このコは
まだ逆上がりができなくて
泣いていた頃ではないのか。

定食のご飯って
どのくらいの量ですか、と聞くと
「一膳半くらいですかね」と
丁寧に答えてくれた。
それなら大盛りは必要あるまいと、
普通サイズのハンバーグ定食を注文。

出てきたら
思いのほか ご飯が多く、私は 自らに
ほんまにこれ普通サイズかと反問。

ひょっとすると あの若僧、
私がご飯のサイズを聞いたものだから
大盛りをオーダーしたと
勘違いしやがったかと悶々。

まぁいいか、と少し行儀は悪いけど
読みかけの小説を読みすすめながら
まずは副菜を平らげ、
大盛りかもしれないご飯は全部、
ハンバーグのために残しておいた。

お気づきの通り、
韻を踏むのは途中でやめた。

多いやろうと思っていたけど、
ハンバーグの肉汁との比率は
ちょうどよかった。
味噌汁も美味かった。

これなら 例え、
あの青年がご飯を大盛りと
間違えていたとしても、
喜んでそのプラス150円分を
前のめりで払ってやろうと思ったら
ほんまに普通サイズやった。

途中、若僧なんて言葉を使って
ごめんよベイビー。
日焼けした笑顔の素敵な
接客業の似合う男の子でした。
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