お願いフルーツ「その他」

読書フルーツ『西行』

読書フルーツ『西行』
2019年 読書141 『西行』

白洲正子の書く文章が好きで、
その鋭さというか、
世の中を切り取る視線の鋭利さ、
真実を語る潔さのような、
うまく説明できんのですが、
とにかく白洲正子の文章に
私はすっかり、
虜ってしまったわけですが、
あれは確か河合隼雄との対談を
読んだのだったかな。

だとすれば、
文章というよりは
言葉そのものですね。
白洲正子の言葉に
やられてしまった私は、
いつか、ちゃんと白洲正子の
代表作といえるような作品を
しっかりと読まないといけないな、
と思っていたところ、
ついに読むことができたのが、
『西行』です。

西行のことが白洲正子は
ものすごく好きなんやと思います。

そこに一点の曇りもなく、
専門家の論評を読んだり、
ゆかりの史跡を歩いたり、
和歌を読んだりしながら、
西行について書いているのですが、
あらゆる資料について、
鵜呑みにすることなく、
自らの西行像と照らし合わせ、
かといって意固地になることはなく、
受け入れるところは受け入れながら
新たな西行像を浮かびあがらせる、
という途方も無い作業を
ごくごく自然にやってのけています。

この人の生き方には
まったく嘘がないんだろうな。
清廉潔白というわけではないのですが
清濁併せ飲みつつも、
その場しのぎの取り繕いはせず、
自分の言葉に責任をもち、
逃げることをしない。

そういう姿勢が文章から
ありありと伝わりまして、
自分はきっと、
そういう白洲正子の性質そのものが
好きなんだろうと再確認しました。

好きな人の好きなものは好き、
っていう感覚は誰もが
持っていることと思いますが、
その程度のレベルで
西行のことも好きになりました。
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