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読書フルーツ『蒲団/一兵卒』

読書フルーツ『蒲団/一兵卒』
2019年読書147『蒲団・一兵卒』

実は私、恥ずかしながら
田山花袋は女やと思ってました。
思い込みとは恐ろしい。

「花袋」っていうのが、
とても女性っぽいものですから。
それで『蒲団』のことは
読んでなくても
内容は知っていたので、
女の人がそんな変態的な男の癖を
描写してるなんてすごいな。と
思っていたのですが、
花袋が男だとわかり、
読んでみたあとも、「すごい」に
変わりはなかったです。

実話をもとにしているんですよね。
小説家志望の女が故郷から
出てきて主人公に
師事するのですが、
主人公は彼女に恋をしてしまう。

しかし彼には
妻子もある、社会的地位もあるし
常識のある分別もある人間だと
周りには思われている。
だのに彼の心の中はといえば、
常識人でいなければならないのに
彼女に対するいけない恋心が
増幅して増幅して、
そのアンバランスのなか、
彼は壊れていってしまうんです。

でも、
この先生は決定的に
道を踏み外すことはしません。
彼女のことが
好きで好きでたまらないのに
その思いを告げることはなく、
心に秘めたまま、
やがて別れを迎え、
先生は彼女の寝ていた蒲団に
うずくまるわけです。

こういう気持ちを
「わかる」と言ってしまうと
気持ち悪いんでしょうか。
しかし、わかるのだから
仕方がない。

田山花袋はこの話を出すとき、
モデルになった女性が
これを読まないか、と
不安だったと聞きましたが、
私はこれはウソで、
本当のところを言うなら、
絶対に田山花袋は彼女に
読んで欲しかったのだと思う。

読まれるところまで
想定して興奮を高め、
アドレナリンを出し、
ひょっとすると
違うものも出していたはず。

それにも関わらず、
「読まれないか不安だった」
などと世間に発信するあたりが、
まさに『蒲団』に出てくる
先生そのものではありませんか。

表面だけ捉えたら
まぁ気持ち悪い話ですけど、
絶対みんな、
共感できると思うんですけどね。
どうなんでしょう。

2話目の『一兵卒』は
日露戦争時の名もない兵士が
くたばっていく様を描いていて
これまた短編ながら、
心に迫りくるものがあります。
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