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読書の記録『千曲川のスケッチ』

読書の記録『千曲川のスケッチ』
昨年台風19号により、
千曲川が氾濫したことで、
新聞のコラムがたびたび
島崎藤村の『千曲川のスケッチ』を
引用していたので、
これは読まねばなるまい、と
思っておりましたところ、
図書館の棚に見つけました。
同じタイミングで
ブックオフの100円コーナーでも
見つけましたので、
図書館で借りておきながら、
100円で購入もしました。

実は島崎藤村の作品を読むのは
今回が初めてです。

島崎藤村が長野県の小諸に
塾の講師?として赴任した際、
千曲川をはじめ、
赴任先の自然や人々との交流を
スケッチするかのように
書いたものです。

何か事件が起きるわけでなく、
起承転結があるわけでなく、
田舎の日常の風景が
淡々と書かれています。
私は田舎の育ちですので、
わかるわかる、という部分もあれば
流石にそんな田舎ではなかった。
という部分もあったし、
明治期の作品なので、
時代を感じさせる描写も
ありました。

「スケッチ」とは
うまいこと表現したもので、
まさに小諸での暮らしを
写生するかの如く、
丁寧に丁寧に文章にしていて、
島崎藤村という人の繊細さを
感じることができます。

あとは、
このスケッチへの
途方もない執着といいますか。
これだけのことを
しっかりと「スケッチ」するには
毎日毎時、このスケッチのことを
常に頭の片隅に置いておかないと
いけないはずなので、
ずっと考えていたと
思うんですよね。

目の前に広がる景色、出来事を
感じるだけでなく、
感じたものを文に変換して、
さらに外へ出すという作業を
なんら責任の生じない日記ではなく
こうして人に見せるスケッチとして
完成させたことに対して、
非常に親しみを覚えます。

この作品に引き合わせてくれた
新聞のコラムにお礼が言いたい。
と共に流域の暮らしを一変させた
自然災害の脅威を
思わずにはいられません。
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