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ラジオのお仕事の話『誰をいちばん敬うか』

ラジオのお仕事の話『誰をいちばん敬うか』
ラジオのお仕事をしています。
涌井慎です。

この仕事で原稿を書くようになり、
日本語の使い方について、
いろいろと
注意するようになりました。

注意しているからといって、
全てが正しいかは
はっきり言ってわかりません。
しかし、
何か「引っかかり」を
覚えた文章について、
ここに書きためておくことは、
今後ラジオでのお仕事を
続けていくうえで、
大切なことのような気がして、
こうして記録しています。

ラジオの原稿は
視覚ではなく
聴覚に訴えるものなので、
自然、ネットや雑誌の記事とは
表現が異なってきますが、
「紛らわしい表現は使わない」
というのは媒体に関わらず、
心がけておきたいもの
なのではないかと思います。

先日、ネットの記事で、
広島カープの菊池選手と
カープOB新井さんの対談を
読んでいたところ、
菊池選手がこんなことを
話していました。

「オーナーが、誠也には
ノビノビやってほしいと
言われていた。」

実際に菊池選手が、
そのように言ったものを
書き起こしたのだと思いますが、
これだと、
オーナーが誰か違う人、
おそらくオーナーよりも偉い人に、
誠也にはノビノビやってほしいと
助言を受けていた、と
捉えることもできます。

文脈を読めば、
そんなはずはない、
ということはもちろんわかります。
しかし、
これに関しては、
「オーナーが、誠也には
ノビノビやってほしいと
おっしゃっていた」と書けば、
それで済む話だと思います。

一言一句、違わずに
記事にしないといけない、
という制約がるなら別ですが、
そうではないなら、
「言われていた」は
「おっしゃっていた」とするほうが
受け取る側の我々に対しては
親切であると思います。

誰を一番大事にするか?というのは
情報を発信する側にとって、
とても重要です。
ネットにしろ、
雑誌にしろ、ラジオにしろ、
最も大事にしなければならないのは
言うまでもなく、
その情報を受け取る皆さん、
ラジオならリスナーの皆さんです。

だとすれば、
本来、「おっしゃっていた」も
不適当な気もします。
菊池選手とオーナーの間では、
オーナーが偉いのは明らか。
対談相手の新井さんとオーナーでも
おそらく偉いのはオーナーでしょう。

ですから、
菊池選手と新井さんが
プライベートで話しているなら、
「言われていた」でも
「おっしゃっていた」でも
問題はありません。

しかし、
ここに「読者」という
立場が加わります。
「読者」はこの場合は、
「オーナー」よりも、
敬われなければならない存在です。

例え、オーナーお抱えの
運転手だったとしても、
その運転手が読者なら、
この場合は一番偉いのは
運転手も含む読者です。

だとすれば、
本来は
「オーナーが、誠也には
ノビノビやってほしいと
言っていた」でいいはずです。

この視点はラジオをやっていても、
意外に抜けてしまいがちで、
気をつけなければ
ならないところです。

こういう細かいところに
いちいち躓きながら、
よりよい放送を
心がけていきたいと思っています。
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