お願いフルーツ「その他」

読書の記録 遠藤周作『ぐうたら愛情学』

読書の記録 遠藤周作『ぐうたら愛情学』
令和の出版物なら
完全にアウトな昭和物を
読むのが好きです。

当時のほうが
言論の自由、表現の自由ってのは
在ったんじゃないかと思います。

なんせ、
全編通して、
女性は大昔の出来事を
ことあるごとに
一言一句違わず蒸し返すから
食べたものを戻して
何度も食べる反芻をする
牛みたいなものだと
延々主張しています。

当事者じゃないから
笑えるのかもしれないし、
ここまでいくと、
当事者でさえ、
笑えるのかもしれません。

昨年のM1グランプリで、
誰も傷つけない
ツッコまない漫才で
大躍進したぺこぱが象徴する
令和の笑いには
完全に置いていかれたセンスですが
こういう毒を受け入れる
包容力が無くなってしまったのか、
と嘆かわしく感じたりもする。

とにかく、
一時代二時代昔の本なのですが、
それでも現代社会を
生きる私に突き刺さる名言があり、
いくつかメモをしておきました。

以下引用。
「河盛好蔵先生の御説によると、ユーモアとは、自分をバカ、もしくは道化師の位置において、バカや道化師になれぬ人間をひそかに笑う感覚である。もしくはバカ、道化師の感覚をひそかに味わう楽しみでもある。」

「愛とは「棄てないこと」。「愛」とは魅力あるもの、美しいものに心ひかれることではない。美しいもの、魅力あるものに心ひかれるのは「情熱」といって「愛」とは関係ないのである。「愛」とは「棄てないこと」から始まる。」

「シラノ・ド・ベルジュラックは「安定は情熱を殺し不安は情熱をたかめる」という単純な、しかし人があまり気づいていない原則を知っていたのです。だから彼はたえず自分とロクサーヌの関係を不安定にしておこうと考えたのです。」

ほかにもいろいろと、
引っかかる言葉の多い本でしたが
メモしていたのはこの三箇所でした。

時代を経て磨かれていく真理もあれば
廃れていく真理もあるのです。
TOP