お願いフルーツ「その他」

太陽日記 短編小説 私のおもちゃ

太陽日記 短編小説 私のおもちゃ
総理、
Twitterのことはご存知ですか。

ボクをバカにしているのか?
Twitterくらいは知ってるぞ。
ボクはなんだって知ってるんだ。
アメリカのトランプ大統領だって
ボクの友達なんだぞ。

これは失礼いたしました。
その、総理もご存知の
Twitterでですね。
いま、
流行ってることがあるんですよ。

うん?
ボクがTwitterを知らないと思って
バカにしているんだろう。
Twitterで流行ってるって
おかしいじゃないか。
Twitterが流行ってるんだろ?

ええ、ええ、
その通りです。
Twitterが流行っているんです。
Twitterが流行っているんですが
そのTwitterのなかにも
流行り廃りがあることくらい、
総理はご存知ですよね。

うん、うん。
そうやって言ってくれたらわかる。
わかることを
わざわざわかりにくくいって
ボクを試そうとするのは
君の悪い癖だぞ。
ボクの機嫌を損ねたら、
怖いんだからね。
気をつけるんだぞ。

大変申し訳ございません。
それでですね。
いま流行りのTwitterのなかで
さらに流行ってるのが、
ゲンっていう歌手なんですがね。
彼が弾き語りをしていて、
その動画と自分の動画を
コラボするのが
流行っているんですよ。

ゲンっていう歌手が
弾き語りしていて、
その動画と自分の動画を
コラボするのか。
ふむ、ふむ。
それがいま面白いのか。

そうなんです。
聡明なる総理なら、
もうご存知かと思うんですが、
ウイルス禍で外出できず、
ストレスフルな人たちの間で
共感されているんですよ。

そうか。
ボクもみんなにがんばれって
メッセージを送っているけど、
同じことをゲンっていう歌手も
やってくれているってことだね。

まさにその通りです。
総理が
率先してやっておられることの
後を追っているのです。

ボクのメッセージが、
ますます世に広がるんだね。

まさにその通りですが、
ここでさらにもう一押し、
総理の思いを
国民の皆さんに
広く伝える手段がございます。

ボクはもう、
国民にがんばってくれと、
最大限のエールを送っているぞ。
このうえ何をすれば
いいというんだね、君は。

ですから、
先ほど申し上げました通り、
いまゲンという歌手が
弾き語りしていて、
その動画と自分の動画を
コラボすることが
Twitterで流行っているんです。

バカにするんじゃないぞ。
ボクは何度も同じことを
言われなくても、
一度聞いたことは
ちゃんとわかるんだぞ。

失礼しました。
そのご理解があるならば、
これから私がするお話も
きっと有意義なものに
なるはずです。

もったいぶった話し方を
ボクは好まないと
何度も言っているはずだが。

申し訳ございません。
しかし、総理の意向に
沿ったものであるならば、
これまでも、
どれだけもったいぶったとしても
結果総理はお喜びになりました。

いつもそうとは限らないぞ。
ボクを怒らせた連中は
これまで何人も
ボクはピラニアのエサに
してきたからね。

恐ろしい話でございますが、
私はどうやら、
ピラニアのエサにならずに
すみそうでございます。

ピラニアの話はいいから
続きを話さないと
いい加減、ボクは怒るぞ。

話します話します。
ですから、いま大人気の
ゲンとですね。
総理自身もコラボをすれば、
より国民に共感され、
総理の人気は不動のものと
なるのではないかと思うのです。

ボクがコラボするのか。
コラボ、コラボ、コラボ??
ああ、コラボね。
コラボするのか。
いいね。
ボクもいつかコラボは
やってみるつもりだったんだ。
すぐにでもやってしまおう。

段取りはどうしましょうか。

段取り?
コラボのかい?
そ、そ、そ、そんなものは
ボクの手をわずらわせないでくれ。
そ、そ、そ、そんなものは
君が全部整えてくれたまえよ。
なんでもかんでも、
ボク任せにしないでほしい。

かしこまりました。
それでは総理は
ソファーで犬と
戯れておいてください。
コーヒーなど飲んでみるのも
よいでしょう。
そのお姿を撮影いたします。
総理の余裕が
国民に安心感を与えるのです。
いま大人気の歌手が歌うその隣で
総理が優雅に犬と戯れておれば、
この国はまさに
ユートピアとして
全世界から羨ましがられることは
間違いございません。

そうなると、
ボクはどうなるのかな。

そうなると、
総理は世界中の誰もが仰ぎ見る
国民の誰もが尊敬する指導者として
後世に名を残すことになるに
違いありません。

うん。
ボクはいま、
とても気持ちがいいぞ。
よきに計らうがいい。
国民のためなら、
ボクはなんでもやるからね。
国民のためと思うことなら
なんでもボクに言いなさい。
なんでもボクの思う通りに
動かせるんだからね。
ボクはこの国で
いちばん偉いんだからね。

かしこまりました。
これからも、
そのようにいたします。
総理はご自分では
何もお考えになることは
ありません。
全ては私どもが総理の脳となり
体となり動きますゆえ。

うむ。
これからもよろしく頼むぞ。
ボクはじゃあ、
さっそく犬と遊んでくるから、
君たちは準備して後から来なさい。

はい!
かしこまりました!


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