明日を生きるヒントに。岩橋3選

「タクシーの運転手に話を振られた時に対応する為の、教養としてのギャングスタラップ3選」

「タクシーの運転手に話を振られた時に対応する為の、教養としてのギャングスタラップ3選」
タクシーに乗ると、話好きの運転手さんに当たる事がありますね。
皆様も経験があるかと思います。


天気の話、政治の話、昔話、こんな当たり障りの無い話が一般的ですが、
私はかつてヒップホップの話を運転手さんに振られた事があります。


真夜中に乗り込んだそのタクシーの運転手さんは、50代半ば程の、完全に普通のおじさんで決してギャングのような風貌ではありませんでした。
その運転手さんは「息子の影響でヒップホップ聞いているんですよ」という話から始まり、日本のヒップホップから入ったけど、今はアメリカのヒップホップも聴くこと、最初はトライブ・コールド・クエストから入ったが今はスヌープドッグがお気に入りであること、2pacが不幸にあった事を悔やみ、一度自分のタクシーに「ZEEBRAを乗せた事がある」と言いました。


「絶対嘘だ!」と私も言いましたが「いや、ほんとですって!マジで!」とかなり熱くなっていたのでその場はそういう事にしておきました。


たまたま乗せた客がヒップホップに関して、全くの無知では無いと知った運転手さんは嬉しくなったのか


「ブッダブランド聴いた事あります?」
「デ・ラ・ソウル好きなんですか?どのアルバムが好きですか?」
「日本とアメリカで一枚ずつアルバム選ぶとしたら何です?」


と、いった感じで突然ヒップホップ面接が始まりとても難儀した記憶があります。


結局、「ああ」「ハァ」など相づちを打ち目的地で降りた私でしたが
運転手さんは最後に「いやー、キングギドラとかまた観たいっすね!じゃあ!」と言ってブーンと去って行きました。
こんな事になってしまっては大変です。
たまたま乗り合わせたタクシーで困らない為にも最低限のヒップホップを聴いておく必要があるな、と感じた夜でした。
そこで、今回はそんな時にせめて20分は話を持たせられる程度には知っておきたい、教養としてのギャングスタラップの名曲を3曲選んでみました。ご査収ください。




そもそもギャングスタラップとは




ヒップホップは今やすっかりメインストリームに浸透した音楽ジャンルのひとつですが、1970年頃にヒップホップが始まった頃から一貫してストリートギャングの文化と不可分な部分を持ち合わせながら発展してきた側面もあります。

そんな、悪い奴らの暴力的でサグな日常の事をラップするヒップホップのジャンルの一つがギャングスタラップです。


「ヒップホップは悪そう」というボンヤリしたイメージを体現する部分もあり、長きに渡ってヒットチャートを賑わしておりますが最近は社会倫理的な観点から、批判を受けたり音源の販売に対してストレートに行かない部分もあるようです。




The Notorious B.I.G. - "Juicy" アルバム「Ready to die」(1994年)収録








ノトーリアスB.I.Gは、1990年代に活躍したアメリカニューヨークのラッパーです。めちゃめちゃ治安の悪い頃のニューヨークで育った彼は、ご多分にもれず悪くなっていき、麻薬の売人になったり銃の不法所持で逮捕されたりしています。しかし、そのカリスマ性とラップは一目置かれる存在でありヒップホップの歴史の中でも、多くの功績を残した偉大なラッパーとして知られています。残念ながら24歳の若さにして銃で撃たれ暗殺されてしまいました。



【歌詞(一部抜粋)】

”And I'm far from cheap
I smoke skunk with my peeps all day
Spread love, it's the Brooklyn way
The Moët and Alizé keep me pissy
Girls used to diss me
Now they write letters 'cause they miss me”


”貧乏からはほど遠い生活
毎日仲間と葉っぱ吸って
愛に溢れた生活 これがブルックリンのやり方
モエとアリーゼで酔っ払ってる
女の子たちはかつて俺をディスってたけど
今となっては俺の事が恋しいと手紙を送って来るぜ”




いかがでしょうか。ヒップホップによって貧困から脱却し成功した生活についての曲です。レッツパーティー。怖いもの無しの無双状態のビギーの様子が目に浮かびます。


この一節を少しラップしてみれば、タクシーの運転手さんもきっと「お、こいつやるな」となり、1メーターか2メーターほどおまけしてくれるかもしれません。


Snoop Dogg ”Gin & Juice” アルバム「 Doggystyle 」(1993年)収録








Snoop Doggもギャングスタラップ界屈指のセレブですね。この人もコカインの密売や殺人の容疑などでしょっちゅう逮捕されている筋金入りのワルですが、最近は料理好きとして知られるところとなり、料理本を出版していたりします。長年生きていると人間様々な成長を遂げるものですね。



【歌詞(一部抜粋)】

”Later on that day
My homey Dr. Dre came through with a gang of Tanqueray
And a fat ass J, of some bubonic chronic that made me choke
Shit, this ain't no joke”

”その日の遅く
地元の連れのDr.Dreがタンカレー・ジンと
すげえ量のマリファナが巻かれたジョイントを持ってきて
クッソやばかった。死ぬかと思った。いや、マジで”



Snoop doggはタンカレーの公式ブランドアンバサダーをやっているらしく、ヒップホップのイケてるお酒としてジンを広めた功績があるらしいです。すごいですね。すごいのかな?

タクシーの運転手さんにSnoop doggの話を振られたら「Snoop dogg?ああ、タンカレージンと料理研究家の人ですよね」と答えましょう。

「こいつだいぶヒップホップ詳しいな…」となること請け合いです。


ちなみにDr,Dreも相当ワルいラッパーです。


50 Cent - in da club アルバム「 50 CENT/GET RICH OR 」(2003年)収録








50 centはニューヨーク出身のラッパー、プロデューサーです。今となっては超が付くセレブですが、やはり元々はドラッグディーラーとして名を馳せていた人です。音楽的な成功を収め、名声を欲しいままにしましたが素行の悪さでも色々と有名な方です。




【歌詞(一部抜粋)】

”When I pull up out flont
you see that Benz on dubs
When I roll 20 deep,its twenty knives on the club”

”僕がクラブに居るってことは
入口に20インチのタイヤホイールが付いてるベンツが
停まってるってことですよ
僕が、20人の友達連れてクラブに来たら、
それは20本のナイフがそのクラブの中にあるって
ことなんですよ”



また、物騒な事を言っております。怖いですね。
しかし、生まれ育った厳しい環境を生き抜き、音楽でサヴァイブしてどこまでも高みを目指していくラッパーの力強さを感じさせる曲でもあると思います。


タクシーの運転手さんに「俺を乗せてるってことは……1本のナイフがあるってことなんだぜ」などと口走ったら大変なことになるので辞めておきましょう。


ところでこの20本のナイフっていうのは何かの比喩なんですかね?わかんないですね。


最後に

いかがでしたでしょうか。
駆け足でご紹介して参りましたが、少しは雰囲気をご紹介できたのでしょうか。
こんな事書いて、誰かに怒られないでしょうか。


いつどんな時に「お前のベストバウト教えてくれyo」などと声をかけられるかもしれない現代社会。
教養としての最低限のギャングスタラップを身に付けておくことをおすすめいたします。


それではまた次回。
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